投球障害肘のメカニズム

投球するとなぜ肩や肘が痛くなるの?

MRI、動作解析、力学解析、統計解析を駆使して、その謎に迫ります。
投球障害が起こるメカニズムをビジュアライズして表現しました。


スポラボでは、光学式3次元モーションキャプチャーシステムを用いた動作分析の研究を行ってきました。

 

この研究によって、投球動作中にどのような負担がかかるのかを調べ、それをビジュアライズして表現できるようになってきました。

まずは、筋骨格モデルの紹介です。

はじめは、肩のモデルの新しいモデルを開発してきましたが、この考え方は肘にも応用できることがわかりました。

 

最初に、肩モデルの開発風景をみていただいてから、つぎに肘モデルの開発風景をご覧いただきましょう。

 

 

 

 

 

最後にこのモデルに投球動作を組み込むとどうなるかもご覧いただきましょう。

肩の筋骨格モデルの作成風景を左に動画で示します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

肘の筋骨格モデルの作成風景を左に動画で示します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


投球動作中に肘にはたらくトルクをビジュアライズして表示しました。

 

青い矢印が大きくなる時に肘のトルクが大きくなっていることを示します。

このトルクが、肘の内側側副靭帯にかかる負担になります。

 

この負担が繰り返されることで、肘は少しずついたんでいきます。

休息による修復と負担による破壊のバランスが崩れた時に障害が発生します。

 


さて、今度は、この力学解析の結果をもとに、肘障害が減る動作をコンピュータ上で作ってみました。

 

このシミュレーションでは、小学野球選手の投球動作データ、肘の内側靭帯にはたらく張力データ(推定値)、球速データ、コントロールデータからなるデータベースを主成分分析と最適化手法を駆使することで作りました。

 

シンセサイザーの詳しい説明はこちら。

 

シンセサイザーの詳しい原理はこちら

 

 

 

 

 

ここでは、少年野球選手を対象に、

「球速を速くしつつ、コントロールもよくしつつ、肘の負担(内側側副靭帯に働く張力)を減らす」

という投球動作をコンピュータシミュレーションで作っていきます。

 

 

 

 

ニーズの設定はスライドバーを用いて行います。

 

球速を上げるための動作を作り出すためには、最上段のスライドバーを右に動かします。

コントロールをよくするためには、中断のスライドバーを右に動かします。

肘の靭帯張力(UCL)の張力を減らすためには、最下段のスライドバーを右に動かします。

 

このようにして、ニーズを設定した後に、スタートボタンを押すと、シミュレーションが開始され、数分以内にこのニーズを満たす投球動作をコンピュータが求めてくれます。

 

 

 

 

 

 

 

シミュレーションで求められた動作の特徴的なところを静止画で示しました。フットコンタクトフェーズをまずみてみましょう。

右がすべてのニーズを満たす動作

左がニーズを満たさない動作

になります。

左脚の膝あたりに着目してみてください。姿勢の違いがわかるでしょうか?

左脚の姿勢の変化に伴って、体幹の姿勢にも変化が連動しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

次は、ワインドアップフェーズをみてみます。

少年野球選手に指導するためには、フットコンタクトよりもワインドアップフェーズの方が指導しやすくなるため、まずはこの姿勢の違いをイメージさせるとよいかもしれません。

右がすべてのニーズを満たす動作

左がニーズを満たさない動作

右の方が、体幹が捻られているのがよくわかるでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

今度は、ワインドアップフェーズを横からみてみます。

 

右がすべてのニーズを満たす動作

左がニーズを満たさない動作

 

体幹から右下肢の姿勢の違いがわかるでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

最後にシンセサイザーで作成した動作を重ねて表示してみます。

 

クリアに濃く映っているほうが、すべてのニーズをみたすほう。

 

ボヤけて薄く映っているほうが、ニーズを満たさない動作です。

 

ちょっとした違いですが、この違いがパフォーマンスと障害に影響するようです。