皮膚病変のダーモスコピー写真を人工知能が解析し、その病変がメラノーマ(Melanoma)である確率を推定するシステムを開発しました。
最近はコンピュータサイエンスが非常に発達してきております。
特に、ディープラーニングというアルゴリズムによって、画像認識や音声認識の精度が向上してきました。
これらは音声認識や画像認識の例ですが、
写真からチワワを認識できています。
これは、アマゾンの物体認識の例ですが、女性の顔から表情の認識をしています。
「表情の認識ができるのなら、皮膚病変の認識もできるかもしれない」と考え、
メラノ―マのダーモスコピー写真を認識させてみました。
しかし、結果は残念ながら、
85%の確率で「鉄さび」
という結果でした。
皮膚疾患の認識は現状ではできないようです。
さて、今度はメラノーマについてです。
メラノーマは予後不良の疾患であり、
早期に発見する必要があります。
近年、ダーモスコピーが普及してきましたが
早期メラノーマの診断には熟練を要します。
経験の少ない医師や他の診療科の先生には、
ダーモスコピーによる早期メラノーマの診断は
非常に難しいと考えます。
また、医師の偏在化によって、へき地では専門医による診察が難しいという現実があります。
医師は、メラノーマを疑う病変を見たあとに、
自分の経験や記憶と照合して、
メラノーマの可能性を判断します。
一方、ディープラーニングでは、病変の写真について、神経回路を模擬した数理モデルを用いることで、
メラノーマの可能性を判断します。
人間の記憶や経験に該当するところが、
データベースになります。
今回は、ディープラーニングを活用することにより、
メラノーマの診断をサポートするシステム
を作成してみました。
まず、医学書の症例写真を片っ端からスキャナーで
取り込みました。
メラノーマの症例は155例
その他の症例を251例
収集し、反転画像(augumentation)を作成し、
合計1218枚の画像データベースを作りました。
その後、このデータベースについて深層学習を行い、
最適な推定モデルを作成しました。
今回の学習回数は10万回でしたが、
学習にかかった時間は、たったの10時間でした。
これにより、正診率98%のモデルを作成できました。
モデル以外の症例でも汎化能力が高いかどうかをさらに検証しました。
今回は○○大学から提供いただいた新規10症例を用いて、医師と人工知能の精度の比較をおこないました。
今回参加した医師は
ある整形外科医と、
ある皮膚科専門医です。
結果です。
ある整形外科医の正診率は60%でした。
人工知能による診断サポートシステムは90%、
皮膚科医は100%でした。
したがって、このモデルを使って、
医師の行う診断のサポートが可能
になるかもしれません。
人工知能は間違えた症例を再学習できるので、
再学習を繰り返すことで、
さらなる精度の向上が望めます。
本システムの活用風景をお示しします。
まず、ダーモスコピーとデジカメで病変を撮影します。その写真をパソコンに転送して人工知能の診断を行い、結果を患者に説明します。
実際のスマホの画面はこのような形になります。
真ん中の丸ボタンをクリックするとこのような画面が立ち上がります。
画像を選択します。
画像転送⇒人工知能による解析⇒結果表示
まで少し時間がかかります。
しばらくお待ちください。
結果画面で、メラノーマの可能性を表示します。
実際のスマホの画面。
実際の患者説明の風景
今回のアプリの開発意義です。
ベテランの皮膚科医も一人医長のときは、
ときどき自分の診断に不安を抱えるときがあります。
一方、若手の皮膚科医は未熟なため、
いつも不安を抱えています。
こうした皮膚科医にとっては、このアプリによって
メラノーマの権威の先生が隣にいて、
診断をサポートしてくれるような
安心感を与えることができます。
また、医療過疎地における総合診療科の先生方にとって皮膚科医が隣にいて、診断をサポートしてくれるような安心感を与えることができます
以上、人工知能を用いて
Melanomaの診療支援システムを開発しました、