痛みのでやすい投球動作を閲覧できる人工知能アプリ

スマートフォンで自分の投球姿勢の写真を撮影すると、人工知能が解析して姿勢を評価し、痛みのでやすい投球姿勢を提案してくれるシステムを開発しました。

 

 


小学生の投球動作は、毎年毎年 変化していきます。

その中で、肩の痛みを発症する選手もいれば、発症しない選手もいます。

今回我々は、少年野球選手の成長に伴う投球動作の変化と 投球障害の関連性を解析しました。

そして、その解析結果を利用して、スマホのアプリケーションを開発しました。

このアプリケーションを使うと 選手一人一人に対し、

投球肩に痛みが生じる前に、「痛みがでやすくなる姿勢」を知ることができます。

 

 

まずは、現場の声です。

 

「ぼくの投球動作は、どんなふうに変化すると肩に痛みがでやすくなるのでしょうか?」

 

この声にこたえたいと思います。

 

 

データ収集の方法です。

92名の少年野球選手を対象に、毎年、投球動画を撮影しました。

 

 

その中で例えば、この選手の場合、

9歳~12歳まで、毎年、無症状のときに投球動画を撮影しました。

9歳と10歳の間に肩の痛みを生じましたが、10歳から11歳、11歳から12歳の間は、痛みが生じませんでした。

このように、投球動作は変容していきますが、痛みは生じるときと生じないときがあります。

 

 

次に分析方法です。人工知能を使って、全身の関節座標を算出しました。

 

この作業を動作の全フレームにおこないました。

 

 

 

 

その中で今回は、フットコンタクトフェーズに着目したものを発表します。

 

 

 

 

背景を除去すると、人工知能で算出した投球姿勢がより明瞭になります。

 

 

 

次に、左の画像の姿勢と右の画像の姿勢の差分を算出すると 中央の画像ような形になります。

赤く表示されているスティックピクチャーは痛みが生じた時の姿勢を表しています。

この作業をすべての年に行いました。

 

 

 

 

 

今回の解析では、体格や画像の遠近による影響を補正する処置を行っています。

上段の画像では、体格差や画像の遠近の影響をもろに受けているうえに、右足の位置もずれているため、直感的に正確に両者の姿勢を比較することができません。

この座標データをデカルト座標系から極座標系に変換することで姿勢データと体格データに分けることができます。

体格データを一定のモデルに変換して補正することで、

姿勢データの変化分を純粋に比較することができます。 

 

 

 

 

今回は被験者は92名おりましたので、同様の分析を全員に行いました。

今回発症したケースは  のべ33例、

発症しなかったケースは のべ246例でした。

 

 

 

 

 

 

 

これらの差分の平均を求め、各選手の姿勢に組み込むことでこのような平均動作というものを作成できます。

 

赤いスティックピクチャーは、

痛みがでた選手の平均動作

青いスティックピクチャーは、

痛みがでなかった選手の平均動作

 

を表しています。

スティックピクチャーだけだとわかりにくいという人のために、この選手の 痛みが出る前の姿勢と 痛みが出た後の姿勢を 重ね合わせて表示するとこのようになります。

冒頭の動画でご確認できますのでご参照ください。

 

我々は、こうした解析結果を現場の選手に還元するためにスマホのアプリケーションを開発しました。

 

まず、サーバー上にデータ解析センターを構築します。

選手は、スマホのLINEを立ち上げて、そこからご自身の投球動作を撮影し、スマホで送信します。

私のサーバーでデータを受信すると、分析が自動的にはじまり、十数秒後には、その解析結果を自分のスマホでみることができます。

 

 

  

 

 

実際にアプリケーションを使った例を紹介します。

各選手の近未来に痛みが生じやすい姿勢をアプリで作成してみました。

冒頭の動画で動きをご覧になれますのでご参照くだい。

 

こうした画像を選手一人一人に合わせて作成していきます。そして、痛みが生じる前に、痛みが生じやすい姿勢を教育し、予防効果を期待します。

 

 

 

 

 

現場での活用風景を示します。

 

冒頭の動画で動きをご覧になれますのでご参照くだい。

 

 

 

 

今後の展望です。

今回は野球の事例を使ってアプリケーションをつくりましたが、このアプリは他のスポーツでも使用できます。

 

これは、テニスのサーブの例ですが、

野球だけでなく、他のスポーツにも使えますし、

スポーツ障害だけでなく、パフォーマンス向上にも使うことができます。

 

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

発表は以上です。